加圧によって「血行がよくなり」、新陳代謝が活発になる

 

 

人間の身体を循環している血液は、ポンプの役目をしている心臓から送り出されます。血液は大動脈に入って全身に送られます。そして全身をめぐった血液は、静脈に乗って心臓へと戻っていきます。これが血液循環の基本です。もっとも太い動脈と静脈の両方を締められるのは、腕と脚の付け根の部分。ここを加圧することで、効率よく血流を制限することが出来るのです。

太い血管の血流を制限すると、寝ている状態から立ち上がった時と同じような血流の状態になります。立ち上がると重力の働きで下半身に血液がたまり、心臓より上は一時的に血流が減少した状態になります。すると、脳は危機を感じて血流を増やすように心臓に指令を発します。血流量が増えると血行が良くなり、身体のすみずみにまで血液が行き渡ります。その結果、細胞に運ばれる酸素の量が増え、新陳代謝が活発になり、筋肉増強につながるのです。

加圧によって「成長ホルモンが急上昇」

 

成長ホルモンの大きな役割は、身体の成長と新陳代謝を促進させることです。それが、筋肉増量や若返り、ケガからの回復などに大きな効果を発揮します。

成長ホルモンの分泌を促すのは、「乳酸」です。乳酸は、筋肉が疲労する時にできるものです。乳酸ができると筋肉の中にある受容体が刺激され、脳の下垂体前葉から成長ホルモンが分泌されます。

加圧しているときは血流が制限されているため、筋肉内にできた乳酸も出ていきにくくなります。そのため、加圧することで乳酸の量はどんどん増え、受容体が強く刺激されて、大量の成長ホルモンが分泌されるのです。これを東京大学のチームが科学的に研究したところ、大腿部の付け根を加圧した状態で膝の屈伸運動を行い、安静時の290倍もの成長ホルモンが分泌されたことが証明されました。

加圧によって「短時間で大きな効果が得られる!」

 

腕や脚を加圧して、適切に血流を制限した状態で治療をすると、動かしている筋肉に供給される酸素が少なくなります。そのため、通常より早く速筋が活動を始め、短時間で筋力が増強します。また、活動している筋肉全体が、早い段階で疲労してきます。加圧して治療をしている腕や脚の筋肉の中に血液が徐々にたまり、同時に疲労物質である乳酸もたくさんたまってきます。乳酸は、筋肉の中の受容体を刺激して成長ホルモンを大量に分泌させます。成長ホルモンには筋肉を増やす働きがあり、これが筋力の強化につながるのです。乳酸は加圧治療を終えた直後に、また、成長ホルモンは治療を終えてから15分前後に分泌量がピークになります。早い段階で筋肉疲労が現れ、それに伴って成長ホルモンが早期に分泌されることが、短時間で大きな効果が得られる理由です。

加圧によって「短期間でのけがのリハビリに有効」

 

加圧治療を行って感じることは、負荷の大きいトレーニングをしても疲労感があまり残らないということです。限界まで身体を追い込むようなトレーニングをしても、筋肉や関節の痛みが非常に少なく、疲労感も少ないのです。負荷の大きいトレーニングは原則週一回でも、週二回、週三回と繰り返しても身体はすぐに回復します。

加圧治療は疲労感があまり残らず回復が早いため、高頻度の治療に向いているという結論が得られました。これは、短期間に集中して筋肥大筋力アップをしたい場合の有効な治療であるということ。例えば、けがや病気によって筋肉が急激に衰えてしまった際のリハビリにも有効です。リハビリ目的の場合は、可能な状態なら毎日加圧治療を行います。そして実際に多くの成功例が報告されています。

加圧の効果が「科学的に実証された」

 

 

1995年に、東京大学との共同研究で中高年20人ほどを対象に、腕の付け根を加圧し、軽いダンベルを使った腕の曲げ伸ばし治療を週2回行いました。4か月後のMRI(磁気共鳴断層撮影)検査で、その効果ははっきりと証明されました。被験者は、治療前に比べて肘屈筋という腕の筋肉が、平均で20%も増えていたのです。なかには、30%もの筋肉増加をした人もいます。また、直接治療していない肘伸筋という部分も、平均で13%増えていました。それと同時に、筋持久力が増すという結果も得られました。加圧治療では、小さい負荷で大きい効果が得られることが実証されたのです。